設立趣旨書
感動をみんなのものに
1 趣 旨
今日、映画、アニメ、音楽ビデオなどの映像コンテンツは社会生活に欠かせないものとなっています。しかし、「聞こえにくい」「見えにくい」といった困難を抱える人は、そうしたサービスを充分に享受できずにいます。
総務省「平成20 年10 月 人口推計月報 」によれば70 才以上の人口は1,322 万人で、一般的に約5割が高齢難聴といわれています。また、厚生労働省「身体障害児・者実態調査」(平成18年)には、18 歳以上の視覚障害者31 万人、聴覚障害者27 万人とあります。この数は、障害者手帳の交付を受けている人に限られており、手帳は持っていないが日常生活では聞こえにくい、あるいは見づらい、といった 不便を感じている人の数は含まれていません。かねてより聴覚障害者などの当事者団体からは「字幕」の付加などの要望がありました。そうした要望をふまえ、 総務省はテレビ放送に関し、2017 年までに生放送を除くすべての番組に「字幕」を付けるよう指導し、放送局各社は毎年目標値を定め達成に取り組んできました。
一方で、映像コンテンツの提供方法はテレビ放送に限らず、ビデオ、DVD、インターネットによる配信、次世代DVD など、多様化しています。現状では、これらコンテンツのすべてに、十分な対策を取ることは困難です。
こうした中、2006 年12 月13 日に開かれた第61 回国連総会において、「障害者権利条約」が採択されました。条約には、「文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加」(第三十条)とし て、「締約国は、障害者が他の者と平等に文化的な生活に参加する権利を認めるものとし、障害者が次のことを行うことを確保するためのすべての適当な措置を とる。」とあり、以下に続く項目を掲げています。
(a) 利用可能な様式を通じて、文化的な作品を享受すること。
(b) 利用可能な様式を通じて、テレビジョン番組、映画、演劇その他の文化的な活動を享受すること。
(c) 文化的な公演又はサービスが行われる場所(例えば、劇場、博物館、映画館、図書館、観光サービス)へのアクセスを享受し、並びにできる限り自国の文化的に重要な記念物及び遺跡へのアクセスを享受すること。
これを受けて、2008 年4 月3 日までに20 ヵ国が批准し、2008 年5 月3 日付けで条約が発効しています。日本政府は2007 年9 月28 日に署名したものの、2008 年11 月現在も条約には批准しておらず、この影響で映像コンテンツ業界の対策も立ち遅れているのが現状です。
そのため、コンテンツ提供者自らが、情報提供サービス機関や視聴覚障害の当事者団体とともに、特定非営利活動法人「メディア・アクセス・サポートセン ター」を設立し、映像作品などに対する「聴覚障害者用字幕」と「視覚障害者用音声ガイド」などを一元的に管理、提供することとしました。
このNPO法人は、映画、アニメなどの映像コンテンツの利用に際し「聴覚障害者用字幕」と「視覚障害者用音声ガイド」などの情報保障を求める一般市民に対 して、これら情報の管理と提供に関する事業を行い、文化振興と人々のQOL(生活の質)向上に寄与するとともに、映像コンテンツ業界のさらなる振興を目的 としております。
2 申請に至るまでの経過
株式会社キュー・テックは、社会貢献を目的に、発売済みのDVDに字幕を表示させるサービスを開発し、2006 年1 月よりインターネットを利用して無料で提供してまいりました。また、携帯端末への字幕配信など、新たな開発にも取り組んでいます。
こうした技術開発とサービス提供を続ける中、より多くの映像コンテンツを提供していくためには「聴覚障害者用字幕」及び「視覚障害者用音声ガイド」データを公共的に管理するアーカイブの整備が必要であることが分かりました。
このたび、株式会社キュー・テックの呼びかけにより、業界関連団体のほか、情報提供サービス機関や視聴覚障害当事者団体とともに、より公共的なサービスの 提供を目指す「メディア・アクセス・サポートセンター」を設立し、特定非営利活動法人として法人格を取得申請することになりました。